消えた部屋の鍵(かぎ) 田中さんは、一人で山の中の旅館(りょかん)に泊まりに来ました。 夕食の前に温泉に入りました。お湯は温かくて、とても気持ちがよかったです。 「いいお風呂だったなあ。おなかもすいたし、部屋に戻ろう。」 しかし、部屋の前に着いたとき、鍵がないことに気がつきました。 「あれ? 鍵はどこだろう。」 小さなかばんの中を探しましたが、見つかりません。タオルの間にもありませんでした。 「困ったな。どこかに落としてしまったのかな。」 田中さんは、お風呂の入り口まで戻りました。いすの下や、スリッパを置く棚(たな)の近くを探しました。でも、鍵はありません。 そこへ、旅館の人が来ました。 「どうしましたか。」 「部屋の鍵が見つからないんです。」 「そうですか。どこで最後に使いましたか。」 「部屋を出たときです。その後、お風呂に入りました。」 旅館の人も一緒に探してくれましたが、鍵は見つかりませんでした。 「お風呂の中に落としたかもしれません……。」 田中さんは心配になりました。 「大丈夫ですよ。もう一度、かばんの中を見てみましょう。」 田中さんがかばんを持ち上げたとき、小さな音がしました。 カチャッ。 「あれ? 今、浴衣(ゆかた)の袖(そで)の中から音がしましたよ。」 田中さんは袖の中に手を入れました。何か硬い物があります。 「あっ! ありました!」 袖から出てきたのは、部屋の鍵でした。 そのとき、田中さんは思い出しました。お風呂から出た後、鍵を袖に入れたのです。 「自分でここに入れたのに、忘れてしまいました。すみません。」 「見つかってよかったですね。」 田中さんは安心(あんしん)して、笑いました。 「今度は、すぐにかばんに入れます。」 部屋に戻ると、おいしそうな夕食が用意されていました。田中さんは座る前に、かばんの中をもう一度見ました。 鍵は、ちゃんとそこにありました。